こんにちは、闘う海外サラリーマン むさしです。
今回は、アメリカ英語を特徴づける “t” の発音についてです。
“better” を「ベラー」と発音する、というアレですね。
でも実際にはアメリカ英語の t 発音の変化はそれだけじゃないんです。
学校では教わらない、アメリカ英語の t 発音の全貌をお見せしましょう。
目次
アメリカ英語のtには何種類の発音がある?
実際には七変化ではなくて…
この記事のタイトルには七変化と書きましたが、実際には違います。
ごめんなさい、ウソついてました。
語感がいいので使っただけで、実際には5種類の発音があります。
その5種類とは
- strong-t(強いt)
- soft-t(弱いt)
- held-t / stop-t(止められたt)
- silent-t(沈黙のt)
- glottal-t
の5つ。
こうして並べてみると、けっこうありますね。
最後の glottal-tなど、名前も聞いたことがないかもしれません。
私も、アメリカでプロの発音トレーニングを受けるまで聞いたことがありませんでした。
ちなみに日本語では「声門閉鎖」と呼ぶらしいです(意味不明なネーミング…)。
では、それぞれどのようなものなのか見ていくことにしましょう。
強い t 発音:strong-t
まずは普通に原則通りの t 発音です。
アメリカ英語では
- 単語の先頭にある t
- 強く読まれる母音(ストレス)の直前の t
は、しっかりハッキリとした t の音で発音されます。
例えば次のような英単語ですね。
【tire】
【Italian】
単語の頭にあったり、強く読む母音の前にあったりする場合には、このように「しっかりハッキリ」とした t の音になります。
弱い t 発音:soft-t
以前こちらの記事でアメリカ英語とイギリス英語の違いについて書きましたが、イギリス英語と違ってアメリカ英語では t は大事にされていないのが特徴です。
その典型例の1つが「弱く発音される t」で、上の strong-t 以外の t は弱くなり(原則として) “d” に近い音で発音されます。
このことを「弱音化(reduction)」と言います。
【computer】
【water】
これらの英単語では t の音が d で発音されていますよね。
一般的に「アメリカ英語の t 発音」というと、これをイメージするのではないでしょうか。
なお「原則として」と書いたのは、まだまだこれから紹介するパターンの発音変化があるからです。
では次に進みましょう。
消えてしまう t 発音:slient-t
次は t が消えてしまう パターン。
こちらは「n + t + 弱い母音」の場合に t の音が消えてしまうというルールです。
あなたも次のような発音を聞いたことある t 発音だと思いますが、非常にアメリカ的な英語発音ですよね。
【counter】
【Santa Claus】
2番目の単語はいわゆる「サンタクロース」ですが、t の発音が消えてしまって「サンナクロース」になってしまっています。
また次の動画は、アメリカで超絶人気だったコメディドラマ "Seinfeld" の1シーンです(31秒~46秒を再生する設定になっています)。
この中の最後のセリフ中の "fantasy" の発音に注意して聞いてみて下さい。
[arve url="https://youtu.be/ycjjkAPhhsQ" parameters="rel=1&start=31&end=46"]
この場面のセリフは次の通り。
Kramer(背の高い方:K): And you remember my corporation, Kramamerica Industries?
(俺の会社、Kramamerica Industries って覚えてるだろ?)
Jerry(背の低い方:J): ...Alright?
(...それで?)
K: Well, apparently NYU is very enthusiastic about their students getting some REAL-WORLD corporate experience.
(いいか、ニューヨーク大学は明らかに生徒が現実世界の会社経験を得ることにとても熱心なんだよ)
J: But you only provide FANTASY-WORLD corporate experience.
(でも君は、空想世界の会社経験しか提供できないだろ)
まったく Jerry も手厳しいですね。
「君は空想世界の会社経験しか提供できないだろ」というのは、「君の会社って言うけど、それってただの空想だろ」って言っているのと同じですよね。
それはともかく、この最後の "fantasy" では n の後ろの t が消えて、あえてカタカナで書けば「ファナシー」のように発音されていることが分かります。
ここまでは、ある程度なじみがあるかもしれませんが、ここから少し特殊なルールになっていきます。
t で止まる発音:held-t / stop-t
次は、t で終わる単語の場合「t で止める」発音になるというものです。
呼び名は held-t だったり stop-t だったりしますが、どちらも「t で止める」という意味になります(実際には別物として習いましたが、ここでは統合しています)。
でも「t で止めるって言われたって…」と疑問に思うかもしれませんね。
これは「t を発音する舌の形のまま止まる」つまり「上あごから舌を離さない」ということ。
こちらの記事で「子音で止める方法」を説明しましたが、舌を離すことによって余計な母音が入ってしまうので、舌を離さないというのがポイントです。
当然ですが、この held-t / stop-t の場合には舌を上あごから離さないので t の音は聞こえません。
ただ、私の個人的な経験と観察を述べるならば、この種類の t は色々なパターンに分かれ必ずしも上に書いた通りにはならないな、というのが実感ですね。
そのパターンとは
- 文自体が t で終わる場合 ⇒ かすかに聞こえるぐらい弱く t が発音される
- 文自体は途中で、t で終わる単語の後に母音で始まる単語が来る ⇒ リエゾン(音のつながり)が起こる
- 文自体は途中で、T で終わる単語の後に子音で始まる単語が来る ⇒ 舌を上あごに付けたまま次の子音の発音に進む
という3種類です。
例えば、単純に "white" と言うときは、最後に弱く t が発音されます(軽い舌打ちのような感じ)。
また "white elephant" などと言う場合には、white の t と elephant のe がつながって発音されますよね(リエゾンが起こる)。
でも "white bird" と言う場合には、舌を上あごにつけたまま口を閉じて b の発音に進むので、結局 t は発音されないことになります。
【white / white elephant / white bird】
少し複雑に感じるかもしれませんが、これが held-t / stop-t です。
学校では教わらないけど「究極にアメリカ英語らしい」t 発音:glottal-t
さて最後は glottal-t、日本語では「声門閉鎖」です。
これは、おそらく聞いたことがないと思います。
でも上に挙げた色々な t 発音と同じぐらいよく使われているんですね。
glottal-t(glottal-stopとも言う)とは、「強い母音+ t + 弱い母音 + n」となった場合に t が消えてしまう現象です。
と、言葉での説明だけでは分かりにくいでしょうから、次の音声を聞いてみて下さい。
【important】
【button】
どちらの単語も、間の t が消えてしまっています。
button など「バゥン」みたいな発音になってますよね。
その前の母音が強く読まれた反動で、弱くなりすぎて消えてしまったわけです。
弱くなるにもほどがあるだろ、と言いたくなりますが…。
ここでは、t の発音のために舌を上あごにつけたまま、それを離さずに次の [ən](ゥン)に進んでいる、ということが起こっているんですね。
そのため、息が鼻から抜ける感じの発音になっています。
言われるまで気づかない発音ですが、実際にアメリカのドラマとかを見てみるとこのような発音が多く使われていることに気づくはずです。
私個人としては、この glottal-t が究極のアメリカ英語発音だと思っています。
まとめ:アメリカ英語の t 発音はたくさんある
いかがでしたか。
今回はアメリカ英語に特徴的な t の発音について説明していきました。
今まで知っていたものだけでなく、知らなかったものもあったのではないでしょうか。
特に最後の glottal-t はメジャーなのに知られていないアメリカ英語発音の隠れた奥義、ですね。
このように、ふだん「なんとなく」知っているようなことも一度きちんと学んでみると「あ、そうだったのか」という気づきが得られますので、練習をするにあたっては発音ルールをきちんと学ぶことがおすすめです。
むさし
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